NLP(神経言語プログラミング)で演技を分析する

NLP

 

 

 

 

 

 

 

 

パフォーマーは己の演技を客観的にみなければなりません。
一から十まで分析して、ケチつけて、よりよいものをつくるのです。

けれど、それがむずかしい。
自分を客観視するなど——日常生活でも——まず不可能です。

そのために、公式を活用するのです。
いわばパフォーマンスを分析するためのガイドラインです。

そのなかのひとつに、
NLP(Neuro-Linguistic Programming)の理論があります。

といっても、これがなかなかくせ者で、うのみにするのは考えものです。
そのさじ加減をふまえつつ、書いてみます。

 

NLP(神経言語プログラミング)とは?

 

NLPの紹介は目的でないので、さらりと書きます。
基本的には、天才心理療法家のスキルを、我々凡人にもできるよう体系化したものです。
あるいは、そういわれているものです。

自己啓発、教育、ビジネスなどにもひろまっているようです。
しかし、完全な心理学というには、根拠が薄弱、というのがおおかたのみかたです。
すごく雑にいうなら「心理学っぽい仮説の数々」です。

たとえば「人間は嘘をついたら右をむく」という話をよくききます。
映画や小説、テレビの発言などでひろまったようですが、これもNLPがもとです。
「アイアクセシングキュー(視線解析)」と、よばれる理論です。

ですが、これも、そこまで正しいわけでありません。
反対するひとも大勢いるくらいの「仮説」にすぎないのです。
嘘ともいえず、真実ともいえないくらいです。

もちろん、NLPが、すべてまやかしだというのでありません。
盲目的に信頼すべきでない段階にある、ということです。
役にたちそうなら、とりいれたらいいわけです。

 

VAK(表象システム)理論

 

僕が採用している理論に「VAK(表象システム)」があります。
簡単にいうと「人間は三つのうち、どれか得意な感覚で世界をうけとっている」というものです。

視覚(Visual)
聴覚(Anditory)
身体感覚(Kinesthetic)

の三つです。
そして個人ごとに「優位感覚」があるというのです。

これらは、好みや、性格、会話、思考、行動等にあらわれます。
あいての優位感覚を推測して、自分もそのチャンネルにあわせるなどの技もあります。

なかでも、自分の優位感覚を学ぶのはおすすめです。
自覚することで、あらたな考え方をえることができます。

応用法・判断基準などは、検索するか、そのへんの本を買ってください。
そこまで書くのはめんどくさいです。

 

VAKで演技を分類する

 

このVAKで、演技も分類することができます。
つまり「あなたは演技をどのように認識させようとしているか?」がわかります。

①視覚的な演技
・言葉を必要とせず、視覚に訴えかけるもの
・映像発想的なもの
・ビジュアルなもの
・動きを必要とするもの
・観客の目をむけさせる必要があるもの

②聴覚的な演技
・言語にたよったもの
・文章発想的なもの
・ロジカルに進行していくもの
・動きのすくないもの
・観客の耳をむけさせる必要があるもの

③身体感覚的な演技(おそらく少数)
・肌感覚に訴えるもの
・感覚的にすすんでいくもの
・観客の触覚、嗅覚、味覚に響くもの
・ある種のメンタルマジック

はっきりいって「①視覚的な演技 ②聴覚的な演技」を気にするだけでいいでしょう。
それも「③身体感覚的な演技」は、おそらく少数だからです。

エンターテイメントの基本は「みるか、きくか」です。
大勢につたえるためには、きりすてられる感覚もあるのでしょう。

結果として「身体感覚」に、響くことはあっても。
肌感覚は、パフォーマンスにもちこみにくい感覚なのだとおもいます。

メンタルマジックが肌にぞわりとくる、という意味であてはまるかもしれません。
しかし、あれも基本的には〝認識〟に訴えるものであり、
必ずしも〝身体感覚〟に訴えるものではないと考えています。

 

VAKで演技を分析する

 

気にすべきは、かたよりすぎていないかです。
もちろん〝自分の優位感覚〟を、重視するのは〝強み〟になりえます。
むしろ持ち味といえるでしょう。

かといって、自覚してそうするのと、無自覚なままなのは、おおちがいです。
自分の立場を把握した上で、構成するからこそ、フォローできることもあります。

不自然なほどかたよっているかもしれません。
あるいは〝強み〟を失ってしまっている——さらにのばせる——かもしれません。
ほかの感覚をもった観客にも、もっと、やさしくできるかもしれません。

理想をいえば、すべての感覚がミックスされていることでしょう。
〝強み〟をいかしながら、ほかの感覚もとりいれるのです。

ほかのパフォーマーを参考にすることもできます。
僕はよく「このマジシャンはどの優位感覚をもっているだろう」と考えます。
その演技が「視覚的か、聴覚的か」だけで十分わかります。

たとえば僕は、聴覚優位タイプです。
前回のしゃべりのテンポで観客をふりむかせるなど、その最たるものでしょう。

自分の感覚だけでつくった演技は、ある意味でひとりよがりです。
あなたとちがう、世界のうけとりかたをしている観客も大勢いるのです。

だとしたら、全員にうけとりやすいものをつくるべきではありませんか。
そういう話です。

VAK理論は「人間はそれぞれの見方で世界をうけとっている」という、
あたりまえのことを、いまさらながらおしえてくれます——演者がわすれてはならないことを。

そんなふうに、あやしげな理論をだしてまで、己の演技にケチつけるわけです。
以上。