先日、桜の大阪城公園にてストリートマジックをしました。
そう報告すると、いくつか質問をいただきました(なぜか最近演技についての質問が多い)。せっかくなので挑戦してみたいけれど、ちょっと勝手がわからないマジックプレーヤーもいるのかもしれません。なにかをするときは、ある程度、ロジックを組み立てたほうが安心できます。なのでそのとき考えた作戦をまとめます。
とはいえ、今回は、イベント会場にのりこんだだけです。私もストリートの専門家ではありません。いくつか本流とは違うこともあるかと思います。そのあたりはご容赦くださいませ。
花見客はすでに心がオープンです。
それに、案外、もってきたトランプで遊ぶくらいで手持ちぶさたにしています。シートを広げたはいいもののヒマなのです。盛りあがるキッカケを探しているともいえるでしょう。マジックを披露すれば、こちらが驚くくらい声をあげてくれます。
彼らは、楽しみにきているのですから、楽しいことに敏感なのです。
駅や街路で声をかけるより、よっぽど暖かいと思います。それに、シートを広げているので近づいても逃げられません。その場所から動くわけにいかないからです。一応は話をきいてもらえます。
一般的なストリートマジックのように、テーブルなどを組み立てて、場所をつくらない方がいいと思います。
拠点を作って〝待ちの姿勢〟でいても、花見客は、ちらちら通りすぎるだけです。前述のように、すでに来客のメンタルセットはできあがっています。わざわざ遠いところから始めるのは不利です。
こちらから各シートにでむいて披露する方が、よっぽど効率がいいです。大事なのはフットワークです。どこかに設備をおいて、あちらから足を止めてくれるのを待つのはやめましょう。たぶん足がすくんで、お地蔵さんみたいに動けなくなります。
あと、たぶん警備員にとめられます。
この質問が一番多かったです。
やはり気になるところなのでしょう。どう始めたらいいかわかりませんからね。
しかし大事なのは「これさえ使えば大丈夫という鉄板ワードは存在しない」ことだと思います。どんな気の利いたフレーズも、おどおどしながら口にだせば拒否されるでしょう。逆も真なりです。
つまり、なにを言うかより、どう言うかだと思います。
今回は「こんにちわ」「マジックやってるんですよ〜」「はあ、どうも」くらいでした。ふらふら近づいて、カードをドリブルしながら挨拶するくらいのものです。
トランプすらみせずに「桜きれいですねえ」「その風船なんですか」のように、ただの雑談をして、そこから「実はマジシャンでして…」と始めることもありました。
警戒心をといて、礼儀ただしく近づく、という感じです。
もちろん、ある程度の事前選定は行います。
カードを手に歩いていると、ちらりと顔をむけてくれる人がいます。「なにかやってるんだろなあ」という顔です。そういう信号をキャッチして「どうも、マジックみませんか」と声をかけるわけです。場の放つ、シグナルに敏感になることです。
そのためには会場中を楽しそうに歩くことです。「この人がやってくれることは楽しいことに違いない」と思ってほしいわけですから。真剣な顔をしてはいけません。桜を愛でながら、てくてく歩きましょう。
幸運にも、マジックをする場を与えられたとしましょう。
パフォーマンスのあいだ、まわりの花見客を観察します。すると必ず「いいなあ」「マジックかな?」「なにやってるんだろう」といった顔をしているグループがあります。
そこが次のチャンスです。
顔をあわせると、あきらかに「次はここでOKサイン」がもらえます。近づいて拒否されることはないでしょう。むこうから「次はこっちでやってよ!」と声がかかることもあります。その連鎖反応だけで永遠にまわることができます。
これは花見客にとって「未知のものに手をだすリスク」がなくなるためでしょう。人間ですから、正体のわからないものをみるのは怖いのです。事前になにを得られるかを知らせることです。遠目に、どれくらい楽しいものかをわかった上でなら、自分たちも楽しみたいというわけです。
つまり「私のマジックをみるとこれくらい盛り上がりますよ!」と示すこと。その場を盛りあげることが、次の場につながります。まわりを気にするあまり、目の前のパフォーマンスをおざなりにしないようにしましょう。
もちろん、その場にいながら「いっしょにみませんか?」と、近くの花見客をまきこむこともできます。つねにまわりに気を使っているアピールをしながら、そのエネルギーを大きくしていくわけです。
私もパフォーマンスをして花見シートを移り歩くうちに楽しくってしかたなくなりました。桜の下をにやにやてくてくしていました。
すると、そのぶんだけ歓迎も盛りあがりも増えました。ドリンクをもらったり、謎のダンスをみせられたりしました。老若男女も国籍も犬猫も関係なしです。
やっぱり自分が楽しいと、それが伝わるんだなあと思いました。
はじめてマジックを学んだころ、みんなが喜んでくれたあの感じです。損も得もなく、ただ演技だけに集中できた時間。ひさしぶりに爽快な気分でした。これって、すごく大事なことかもしれない。そんな貴重な学びになりました。
うん、もう、小難しいことはいらないから、なにも考えずに突撃するのもひとつかもしれませんね。
みんな歓迎してくれますよ。
道具を捨てよ、町へ出よう。
いろいろあって桜の大阪城公園でストリートしました。こころよく受け入れてもらえました。おぼえたてのころのワクワクドキドキを思いだしたりして。部屋でカードやコインを手に練習するのもいいですが、外にでて、人とふれあって、はじめてマジックが生まれるんだなあと。 pic.twitter.com/vJFZCbskq7
— 浅田悠介 (@ASD_ELEGANT) April 2, 2018